営業効率を高めるフレームワーク【MEDDIC(メディック)】メソッド
今回は、営業の効率を高めるために活用されるフレームワークの一つをご紹介します。仕事には期限が必ずあります。営業で言えば、年間の予算達成、月次など企業によっては異なりますが、ここまでに売上予算をいくら達成する、というものがあると思います。
その中で効率的に営業活動をするためのフレームワークです。それでは見ていきましょう。
MEDDICとは
MEDDICとはJack Napoli氏が考案した営業の効率を高めるために活用されるフレームワークの一つ。販売プロセスにおいてどうアプローチすべきかを検討する上で必要な情報とも言えます。
平たく言うと、今いくべきか、営業かけるのが無駄かを判断できる材料です。
読み方は、「メディック」です。
- Metrics(測定指標)
- Economic Buyer(決裁権限者)
- Decision Criteria(意思決定基準)
- Decision Process(意思決定プロセス)
- Identify Pain(課題)
- Champion(擁護者)
見込み顧客の獲得(リード獲得)から契約までのすべてのプロセスを統一し、その効果を最大限引き出すための仕組みであり、特にエンタープライズ企業へのアプローチの際に有効です。
※エンタープライズ:大規模な企業や組織のこと
Metrics(測定指標)
指標となるものは何か、改善を期待している指標は何かです。
例で挙げると、顧客満足度が上がる、運用コストが下がる、人件費が削減できる、広告の場合は、CTR、CVR、CPA、CPO、獲得件数、エンゲージメント率など上げればきりがありませんが、そのようなものを指します。
それに合わせて適切なソリューションを提供し、投資対効果を高める可能性があるならば営業できますが、そうでない場合は営業しても売上・契約が見込めませんので時間の無駄という判断になります。
Economic Buyer(決裁権限者)
決裁権限を持っている人=責任者は誰なのかを把握します。
金額や影響が多いものほど決裁権限は上位者になりますので社長である場合ももちろんありますし、エンタープライズ企業の場合は誰ではなく、「経営会議」「投資会議」などの会議自体が最終決裁をする場となることも多くあります。
仮に社長と懇意になったとしても、一人では決められないため、会議にかけることが前提であれば、会議参加者の情報も抑えておく必要があります。
Decision Criteria(意思決定基準)
企業が経済活動を行う際に、どういったアクションを取るかは様々なオプションがあります。
選択肢の中から何を基準にして選んでいくか、つまり意思決定の基準は何かという視点です。営業先の顧客がどこに重きをおいているかを把握することで商談の成約率を高めるアプローチが可能になります。基準は1つとは限りません。
私たちの普段の生活も意思決定の連続です。
タクシーで行くか電車で行くかも、何か基準に決めています。この場合はの意思決定基準は時間軸や金額、或いは快適さなどがイメージ付きやすいと思います。会議が予定されており必ず間に合わせないといけない場合、時間軸という基準でタクシーを選択するなどです。
企業であれば、例えば「予算・ROI・使いやすさ・シンプルさ・操作性・規模・公平性・安心感(365日のサポート体制など)」などがあるでしょう。これは顧客によって様々ですし、いくつか意思決定基準があれば優先順位も存在します。
意思決定の際の【基準】と【優先順位】を抑えておくとよいでしょう。
Decision Process(意思決定プロセス)
誰がどのような時間軸でどのようなプロセスを経て承認されるかを把握する必要があります。
プロセスはスムーズにいかないケースが多く、承認までいくつかハードルがあります。プロセスが分かっていればそのハードルを越えるためのサポートや対応ができるためどこかで止まってしまうリスクを低減できます。
抑えるべきポイントは【誰】【時間軸】【プロセス】です。
競合他社と比較し、どの企業と取り組みをするかを現場でまずは決め今月末までに上長に承認、上長から翌月の経営会議にかけそこで承認が下りれば契約が成立するといった感じです。
Identify Pain(課題)
課題はそのままですが、現状と目標のGAPです。
年間の売上1億が目標で、現状売上5,000万円、見込みが3,000万円(残り半年)とすると、課題は残り2,000万円の売上を作ることです。※見込み額が100%計上された想定
課題が解決できることを前提に、ロジカルかつ具体的に効果を示します。また何もやらなかった場合の損失やリスクも合わせて提示すると、やるべき理由が顧客の中で明確になってきます。
Champion(擁護者)
チャンピョンと聞くと、優勝者のイメージが強いと思いますが、ここでは、「キーマン」のニュアンスです。
大前提、提案内容に興味関心が高く、かつ決裁権限者に対して影響力がある人です。味方につけることができれば成約の可能性も高くなるでしょう。
BANTCとは
おまけですが、営業効率を上げるためのMEDDICを把握するにはヒアリングが必須になります。ヒアリングにおける型で有名なものに「BANTC(バントシー)」というものがありますのでBANTCも学びたいという方はこちらの記事をご覧ください。
MEDDIC同様に営業の効率化にも向いているフレームワークです。
メソッドは補助的に位置付けて使う
注意が必要なのは、MEDDICやBANTC情報を得たからといって必ず契約できるというものではありません。
あくまでも営業プロセスにおける管理メソッドです。営業アクションを決める際の補助的情報とも言えます。営業メンバーと営業管理者(マネージャー)、もしくはインサイドセールスとフィールドセールスの間でコミュニケーションや、営業アクションを決める上での基礎情報ですので、無いよりは間違いなくあった方が営業効率は高くなります。
活用シーン
MEDDICを活用するシーンの一例です。
顧客の見極め
顧客を見極める=無駄な営業に時間を費やしてしまうリスクを回避するのに活用できます。
そもそも契約とは、顧客のニーズや課題を解決できる可能性がある際に成立します。(意思決定として)
課題が分かっても、ROIやコストダウン額など測定指標が自社のソリューションでは達成できない場合もあります。
また納期スケジュール(BANTCでいうT)が期待に応えられるかの見極めもできます。
契約が見込める顧客か、そうでないか、をしっかりと見極めることができれば、営業が効率化されますね。
インサイドセールスとフィールドセールスの連携
こうしたフレームワークは、現在営業の分業化(インサイドセールスの登場)が進んでいる中、案件の判断材料にもなります。
通常インサイドセールスがヒアリングした情報をもとにフィールドセースルに連携し進めるべき案件かそうでないかを判断します。
その際に、MEDDICやBANTCの要素が分かると、そもそも今のタイミングでフィールドセールスに渡す案件か、ナーチャリングしてから時期が来てから渡す案件かを判断できます。また、決裁権限者か否かや意思決定のプロセスをベースに提案の方向・金額を定めることもできるようになります。
営業の連携をスムーズに行うのにも適したフレームワークです。インサイドセールスチーム・フィールドセールスチームが組織としてある企業は、営業組織全体の効率化という点でも取り入れることをお勧めします。
まとめ
以上がMEDDIC・BANTCについての概要と活用シーンのお話でした。今から使える営業メソッドとして取り入れてみてください。
営業にもこうした型が存在します。格闘技でも型はありますよね。応用は型(基礎)ができて初めて活きてくる部分です。特に営業経験が浅い方はご自身の営業活動に取り入れ、浅い方を部下に持つマネージャーの方は部下の営業サポートや管理に活用されるとよいでしょう。