ヒアリングこそが営業の仕事!売りたい物の説明に時間を費やす営業は売れない
今回は説明が大好きな営業の方向けです。
自社の商品やサービスの魅力ばかりお客さんの前で語っている営業は間違いなく売れません。新規のお客の場合は特にです。今回は真面目な人ほど陥りやすい売りたい物・サービスの説明に時間を費やすとどうなるかというお話です。心当たりがある方はぜひご覧ください。
顧客が知りたいのは物やサービスではない
自社の商品やサービスを徹底的に理解することはどの企業でも、研修などをふまえて営業メンバーにインプットしていると思います。営業する上で自社の理解は基礎中の基礎。これから営業パーソンとして走り出すファーストステップであると言えます。
自社の商品やサービス理解は疎かにしてはいけません。完璧なまでに理解しておく必要があります。もっと言うと自社の商品やサービスが属する業界の知識も身に付けておく必要があります。
- 自社商品・サービスの徹底的な理解
- 業界の知識(動向・トレンド・競合環境など)
ここまではしっかりと学べは、商談をこなすということはできますね。
「うちの商品はこんな特徴があってここが他と比べて優れています!きっと貴社の事業に役に立つと思いますのでご発注いただけませんか?」
良く見るシーンですが、さて、顧客は発注してくれるでしょうか?
経験上、一方的に伝えるだけお買い上げになったケースは稀です。無いとは言いませんがその場合は運です。運良く向こうのニーズと自社の商品やサービスがたまたま合致しただけです。プロセスはどうあれ稼げれば何でも良いでしょという意見もあると思います。その通りです。営業ですから稼いだもん勝ち。営業という行動があったからこその売上です。この場合は数が勝負となりますのでいかにたくさんの商談をするかになります。
営業では量も大事な要素ですが、精神論だけで続けて行くのも限界があり、ラッキー狙いでは効率的ではありません。無駄が多い営業と言えます。
その状況から営業として一歩前進するのに必要なのは「相手を知ること」です。相手のニーズに合わせてもしくはニーズを作ることができたら売れる確率を高めることができます。なぜかは追ってお話します。
説明を聞かされる身になって考える
興味が無い(もしくはまだ無い)ものについて、淡々と説明を聞かされたことは無いでしょうか。アパレルショップでも家電量販店でもいいです。
ユーザー体験として、興味はないけど少し立ち止まって商品を眺めていると、スタッフが声を掛けてきて
この商品はこんな特徴があって~、ここがおすすめで~
興味そんなに無いんだよな~早くどっか行ってくれないかな・・・
など永遠に語られていつ逃げようかしか考えてないシーンありますよね?
商品・サービスの説明のみをしている場合は商談でも同じシーンを作ってしまっている可能性があるということです。気持ちは分かります。伝えたい!という気持ちが強い、もしくはこれまで習ってきた知識や話す練習をたくさんしてきた真面目な方こそ陥りがちになります。そうなっている可能性がある営業の方は一度考えを改めてみてください。
向こうが知りたいことを中心に話をすべきなんですよね。こっちが話したいことじゃないんです。
顧客は何にお金を払うか
さてさて話を少し戻します。
大前提の話ですが、企業が何かを買うという行動はつまり投資です。課題を解決できる可能性に対してお金を使います。投資ですからリターンが期待されています。株の世界でも株価が将来的に上がる可能性があるから買いますよね。投資をしてない人でもイメージできると思います。
可能性に対してお金を払う、ということです。
相手は人事部の部長。自身のキャリアとしても成果を出したい。今、会社では残業が多い事で社員からの不満の声や、中途採用で人を取っても離職者が減らないという問題がある。どうにか社員のモチベーションをあげて離職率を下げるという実績を出したいというニーズです。
※他にも離職の原因はあるかもしれませんが、ここでは残業時間が多いことに絞ります。
残業時間が多い理由は無駄な会議が多く個人ワークが遅い時間になってしまう点だとします。
会議のスリム化ができるツールや社内コミュニケーションを円滑にするサービス、もしかすると相手の特性を理解するのに役立つアプリなどもあるかもしれません。(相手のルールを理解することで会話や会議での決議がスムーズになる)
こうしたサービスが現状の問題を解決して目標を達成できる可能性があれば投資判断があるかもしれません。むしろそうでないと会社はお金を使いません。経済活動とは利益を出すことが大前提ですので、利益を出す可能性に対してお金使うものです。ここは必ず理解しておきましょう。
売れる営業になるには
ではニーズだけ聞いておけばいいかというとそうではありません。企業の活動は制約や条件というものが必ずあります。売れる営業になるためにはヒアリング力が必要になります。
知っておきたいヒアリング項目
ヒアリングではこんな事を一般的には聞きます。
BANTCと呼ばれる営業ヒアリング項目があります。
予算(Budget)、権限(Authority)、必要性(Needs)、時期(Timing)、競合(Competitor)の頭文字をとったものでバントシーと呼びます。
- 現状(問題、悩み、活動など)
- 目標(どうなっていれば成功か)
- 課題(できてないけどやりたいこと)
- 予算(課題解決に掛けられる予算)
- スケジュール(いつまでに達成したいか)
- 決裁者(誰が決めるのか、決裁者が判断できる金額範囲はいくらか)
- 競合(営業側の競合)
こうした顧客の情報があれば、その中で何を提案すれば課題が解決されるのか、顧客は価値があると感じてもらえるかを考えることができますね。冒頭の「相手の知りたいことを話す」というのも、こうした情報があるからできることです。
課題に加え今期中に使えるお金がいくらあってどんなサービスなら払う意向があるのか、そしてそれは誰が決めるのか、これを把握しておけば、顧客のニーズにあった提案ができます。
100万円しかお金がないのに、1000万円のとても魅力的な提案で顧客も欲しい!と思っても100万円しかないので発注はできません。後々知って失注するよりも先にヒアリングしておけばそれに合わせて営業活動を考えることができると言うわけです。
状況によって顧客が価値がある!と感じるものは変わります。良く水が例え話に出てきますが、砂漠にいるシーンと水がいつでも手に入るシーンでは水の価値が変わります。砂漠では1万円払ってでも500mlペットボトルの水が売れるかもしれません。タイミングや状況によって価値が変わると言う事はどういった状況に顧客が置かれているのかを理解しておくことで自社商品・サービスの顧客にとって価値があるポイントを明確にして提案することができます。
中期経営計画/事業プランの把握
基礎項目の情報を手に入れる効率的な方法があります。それは事業プランの把握です。
事業プランとは今期や来期、事業としてどんな計画でアクションをするかという計画書のことです。計画は必ず立てますよね。代表的なのは中期経営計画です。上場企業であればHP等で一般公開しています。会社全体の方針を把握するために中期経営計画の把握は必須ですが、各事業の計画が細かくは載っていません。対象とする事業や商品の計画を立てているのでそれを顧客からもらえたらヒアリングしたい項目はほぼ網羅できます。
とは言え、教えてもらうためにはある程度関係値も必要なので、顧客とコミュニケーションと取っている文脈で依頼できそうであれば聞いてみましょう。計画を達成するためにこちら側で何ができるかをご提案差し上げたい、という目的もセットで伝えれば話すメリットを感じていただけることも多くあります。
相手のためになる提案をするために、必要な情報をしっかりとヒアリングする。提案の質を上げるのはこれにつきます。
まとめ
今回は基礎項目としてヒアリングの重要性についてのお話でした。ヒアリングはできてますか?ヒアリングは雑談ではありません、営業する上で必要なことをしっかりと質問すること。できてる人もそうでなかった人もすぐにヒアリングすべきことを改めて整理して営業活動に活かしてみましょう。
ヒアリングは準備が9割です。あとの1割は聞き方や聞くシーン・タイミングの問題です。9割をまずは鍛え、営業経験を積んで残りの1割のスキルを上げていくことを日々の営業活動で意識してみてください。